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「中国史のなかの諸民族」

 (山川出版社)
中国史のなかの諸民族 (世界史リブレット)中国史のなかの諸民族 (世界史リブレット)
(2004/02)
川本 芳昭

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中国の歴史の中で、漢民族や北方民族ほか少数民族がどのように関わりあい、文化を形成してきたのか。今日の中国のルーツを探る。

中国史上の諸民族と漢民族
漢唐間の北方民族と中国
モンゴル族の国家
女真族の国家
長江流域以南の諸民族
現代中国における民族問題




 前半、とても興味深かったです。

 中国の歴史とは、北方民族(遊牧・採集民)と漢民族(農耕民)の対立と交流の歴史である。匈奴と秦の時代に生まれた、この対立の南北構造がのちの歴史展開の基点になっている――と始まり、さまざまな北方民族国家(北魏、遼、金、元、清)について解説。遊牧民の部族制を基にした官制・軍制度や、中国支配の方針について類似、相違点があげられています。

 ですが、読み進めるうちに次第にしっくりしない気分に。
 この書名は内容に即してないのでは? 「諸民族」というほど多くの民族のことが書かれているとは思えませんでした。

 前半2/3が上のような北方民族王朝についての説明ですが、征服された側の文化にはほとんど触れられていません。
 また、遼、金時代は遊牧民と農耕民を異なる体制で統治する――二重構造の制度だったらしいのですが、農耕民向け(?)体制の説明がないので、どんな国であったか全体が想像しにくかったです。

 後半1/3は『長江流域以南の諸民族』の章。でも、名前が挙げられてるのは三民族ほど。
 そして、「現在はこの地域の大半には非漢民族はいない」とし、「彼らは王朝権力に取り込まれて今日の漢民族の祖先となっていったと考えるのが妥当」と語られています。
 が、人がいなくなることに妥当も何もないだろう、と思ってムッとする。冷静に読み直してみましたが、彼らの文化が(名残であっても)どのように今に継承されたか書かれていないので、いったい何がどのくらい「妥当」なのかわかりませんでした。

 最終章は現代について。
 20世紀初頭の中国は、歴史上長く続いてきた漢民族第一主義を放棄する方向を向いたものの、抗日戦争(日中戦争)や1949年新政権樹立という流れのなかで民族政策を転換させていった。
 つまり、当初に宣言されていた自由連邦制の構想が消えて、民族団結と国家統合が優先されるようになっていく――ということが簡潔にまとめられています。

 中華思想の説明はとても明快。
 これは「中国の文化・生活様式と異なるものに対する政治的、文化的差別」であり、「(夷狄であっても)中国文化を修得すれば中華の民になれる」というもの。近代における人種差別とは異なるもの、という説明には、なるほどと思いました。

 それでは「中華の民」とは、そもそも民族とは何か。著者いわく、

「ある集団構成員の中に、その属する集団に対して『われわれの』という意識が存在するか否かは、その集団が民族であるか否かの判定にあたって、最低限確認さるべき点であろう」

 ややこしいですが。要は、自分が何々民族である、という自覚を持っているか否かが最低条件ってことですよね。

 私の勝手な想像ですが、漢民族とは出自はいろいろあっても「中華の民」になることを目指した人々のことだったのだろうか、と思いました。
 同時に、あの辺り(=中原)を治めることを企図しても、自分たちを「中華の民」と思わない民族もいたのではないかと思います。シルクロードだけではなく、川や海を通して他地域との交流も盛んであったなら、価値観や思想は多様なものだったのではないかと。

 そんなわけで。「諸民族」の話、中国史の中の「漢民族」のことを知りたいと思ってこの本を手にしましたが、正直、不満が残りました。初学者向けシリーズ(世界史リブレット)の一冊としては、視点や構成がアンバランスではないかと思いました。

 余談。
 この世界史リブレットシリーズ、他にもいくつか読みました(チベットではなくてヨーロッパ史の方で)。ポイントを超要約してあるので、独学で大雑把につかむには重宝してます。
 ただ、本当に容赦なく端折ってあるので、ものによっては読むのに無用に苦労するのです。この本もそっちの問題だったのかもしれません。

(2009/10/16 読了)
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  1. 2009/10/25(日) 22:25:40|
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