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「康熙帝の手紙」

中公新書
「康熙帝の手紙」
岡田英弘



この本、私は図書館で見つけたのですが、amazonで検索しても出てきません。絶版なのでしょうか。
惜しいです。面白かった!


中国史上、類稀なる名君として名を残す清の康熙帝。文武に秀で、探究心旺盛なこの皇帝がガルダン・ハーン討伐の遠征先から皇太子にあてて書いた私信を紹介しながら、17世紀末の東アジアの歴史ドラマを紡ぐ。



 最初の章は康熙帝とガルダンが登場した頃の情勢について。
 そして、1696年4月、10月、翌年2月におこなわれた康熙帝のガルダン討伐遠征の様子を、北京に残っていた皇太子・胤◆(示へんに乃)(いんじょう)にあてた手紙などから描写しています。
 ちょうどチベットでは、ダライ・ラマ五世が亡くなったのを摂政サンギェギャツォがしたたかに隠していた時期のこと。清側の様子を知ることができました。

「皇太子に諭す。国境に近づくと、草は次第に大いによくなる。水は豊富なので、三旗が集結して行軍する。」

「ガルダンの営地に至ってみると、形跡はあまり大人数というのではない。馬はまだあるようだが、多くはない。羊は一、二頭分くらいしか足跡がない。モンゴル家屋、仏像、靴、鍋にスープを煮たままなどをみな棄てて去っている」



 馬で行軍の時代ですから、草のよしあしや馬の体調は細かく記されてます。また、第二回の遠征は秋から冬にかけてなので、狩の様子が詳しい。
 弓を射るのは、友軍のうちでもやはり満州人が優れている。ある日は兎を300頭、ある日は兎はいなくて、かわりに雉を。また別の日には600頭、といった具合で二、三ヶ月続いてます。大所帯なので獲物の数も半端ではないのですね。
 凍った川を渡る様子、雪が風で吹き寄せられているなど風景描写も魅力的でした。

 ずいぶんと筆まめな人だったようで、数日ごとに手紙を書き、しかも同じくらいのペースでの返事を求めてます。
内容も「こちらからの手紙が到着した日時を知らせなさい」「これくらいの太さの綱を何本送れ」などと細かい。さすがワーカホリックで知られる雍正帝の父親、「これは、血だなー」と思いました。

 文章からうかがえたのは、好奇心旺盛、実際家、という印象。自分は皇帝、というような尊大さは感じられませんでした。
 北京で起こった地震について皇太子が迷信めいたことを書き送れば、欽天監(天文台)の役人について手厳しいことを言って返す。遠征から戻られる時には出迎えに行きます、といえば、手間取ることは要らん、とすっぱり断る。合理的かつ現実家のよう。
 そして、何かにつけて皇太子や皇太后を気遣って、遠征途上でみかけた珍しい植物の標本、きれいな色の石、食べ物を送ってあげています。何だかいい人だ……。
 せっかく往復書簡だったのだから、皇太子の書いた返信ももっとたくさん読みたかったです。古い書簡や記録というのは書き手の有名無名にかかわらず面白いのですよね。

 閑話休題。

 手紙があまりに生き生きとして愛情にあふれていたので、最終章に描かれた皇帝と皇太子のその後には複雑な気持ちがしました。

 諸説あるようですが、皇太子は素行が悪くて廃皇太子に。康熙帝との関係はこじれて、「お前を生んだために母(孝誠仁皇后)は死んだ」などとなじられ、しまいには幽閉・獄中死したという。気の毒すぎる。

 皇太子の人となりはよくわかりませんが、この父親とつきあうのも大変だったろう、とは思われました。
 最初、手紙にしたためられた指示や注意書きがあまりに細かいので、皇太子は十代の子供のような気がしていたのですが、生年をみれば、この頃はもう22歳の立派な成人なんですよね。
「こちらに送るものはていねいに包め。魚を送れ。果物はこちらにたくさんあるからいらない」――数日ごとにこんな手紙が押し寄せたら、大のおとなもグレるわ。

 でも、康熙帝が皇太子に抱いた情はとても深かったらしい。

「こちらは大臣、将校、兵士に至るまでみな元気だ。私は無事だ。皇太子は元気か。留守居の皇子たちはみな元気か」
「このところ何日も、お前からの便りもなく、気持ちが重くてたまらない」


ちょっと切ない気分になりました。(2010/2/14読了)


目次

中国の名君と草原の英雄
ゴビ沙漠を越えて ― 第一次親征
狩猟絵巻 ― 第二次親征
活仏たちの運命 ― 第三次親征
皇太子の悲劇
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  1. 2010/07/05(月) 22:46:15|
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