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「ブータンと幸福論 ―宗教文化と儀礼―」

(法藏館) 本林靖久 著


ブータンと幸福論―宗教文化と儀礼ブータンと幸福論―宗教文化と儀礼
(2006/12)
本林 靖久

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仏教国ブータンの慣習や祭礼をとおして宗教世界観を見るとともに、近代化と共存する「幸福」への展望を語る。

序章 ブータンから学ぶ幸福論
第1章 私の幸福なる体験―仏教文化との出会い―
第2章 育まれてきた幸福―民族と歴史―
第3章 「国家の幸福」と「個人の幸福」―国の政策とGNH―
第4章 「踊る幸福」と「見る幸福」―宗教世界観と祭礼―
第5章 死を含む幸福―日本との比較から―
終章 ゆらぐ幸福と伝統の創造


 1~3章は著者とブータンの関わり、ブータンの歴史、現状について。4章は、ブータンの宗教世界観を表現する祭礼(ツェチュ祭)の解説。5章は、仏教思想・輪廻思想に焦点をあて、ブータン人と日本人の死生観の違いを語る。終章は、現在のブータンが抱える難民問題、近代化と伝統の共存について。

 各章にならぶ「幸福」の文字。これだけ並ぶと、何だかあやしい気がしてしまった(私だけ?)。
でも、ちゃんと(?)文化人類学の視点から見た祭礼の紹介、現在のブータンの姿が語られています。GNHにつられて、やっぱり桃源郷イメージを捨てきれない私にはちょうどいい気付け薬でした。

 4章では「儀礼はその依拠する世界観を根底に持ち、それを可視的にドラマ化している」という視点から、ブータンの祭礼を取り上げており、この章が一番面白かったです。

 諸本尊が踊り手に降臨して土着の神を調伏することを目的とした仮面舞踏(チャム)や、物語劇など数々の演目が数日にわたって行われる。道化(アツァラ)がいて、祭りの舞台と観客を結びつける役割を担っている。観客たちは演目を見たり、露店をのぞいたり、ゲームやギャンブルをする。また、今年、生まれた子供の命名が行われる――祭り全体の雰囲気が伝わってくるようでした。

 そして、舞踏はその動きや身振りでもって仏教の宇宙観をあらわし、踊る者もそれを見る者も、祭りを通して信仰を深めることができるという考え方が興味深かったです。
 祭りの期間中、何日にもわたって、いや準備の段階から儀式が始まっている。しかも、たくさんの人間がおなじ儀式を共有しているという事に圧倒されました。宗教が生活や地域社会の一部分として感じられ、身にしみついていく――その意味の深さを思うと、めまいがしそうでした。

 他に、世界観を具象化した絵画「六道輪廻図」について日本とチベット仏教を比較した節にもひかれました。
 (極楽や地獄など)六道の個々に注目した日本では、六つの世界が屏風や絵巻物などに一枚ずつ並列に描かれ、他方、ブータンでは「輪廻転生する」という点に注目して、六つの世界が並んで円形に描かれる――考え方や注目する点によって表現の形が変わる、というところが興味深かったです。美術品の見方も変わりそうです。

 終章では、伝統文化の保護というブータンの政策を評価しつつも、その伝統が「安心」ではなく「柵」のように見えることもある――こんな感想も述べられています。そして、こんな文章に目をひかれました。

 近代化に向き合ったときに、そのアンチテーゼとして伝統が発見され、伝統を守ることが近代化にブレーキをかける方策となっているように見える。しかし、実は伝統は近代化と共存可能なだけではなく、近代化の所産と捉えることが可能である。

 私は、何から何まで伝統文化という感じより、そこに目新しいものを加えて「これも、いい」と楽しむ姿が好きなので、この言葉は嬉しかったです。携帯電話かけちゃう若いお坊さんとか民族衣装とジーンズの重ね履きとか、かっこいいなあと思うのですよ。
 そうしてみると、政府による統制(TV番組の規制など)という方法には違和感を感じることもあります。でも、何らかの成果があるのは確かだし、またそうしなければならない面もあるのでしょう。
 何もかも「多数決で」「民主主義で」うまくいくとは限らない。ただ、時間をかけて、いい方向を見つけてほしいと思います。相容れないものを排除したり、握りつぶすほど乱暴なことはないと思うので。

 今回、初めてブータンの本に手を出したのは、チベット文化圏の幸せな風景を見たかったから。ニュースを追うのに疲れて悲しくなってしまったので、どうしても幸福なものを見たかったんです。
 もっとも、ここにも難民問題やら周辺国との関係など、理想郷ではない現実があります(まだ、よくわかりませんが)。でも、国として自立していこうと試行錯誤する姿には胸が熱くなりました。こんな思いを人に抱かせるのは、やはり大切なものがここにあるからだろうと思いました。
 2008年はおめでたい大行事もあるらしいし。かっこいい(おい)若き国王の世に吉祥あれ、です。

 ブータンの本はしばらくお休み。元気をもらったので、またチベット本に戻ります。今度はつぶれないように好きなところから読む予定。 (2008/5/16読了)
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  1. 2008/05/25(日) 14:34:22|
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