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風の馬

監督・脚本・編集 : ポール・ワーグナー
共同監督・共同脚本 : テュプテン・ツェリン
出演 : ダドゥン、ジャンパ・ケルサン、リチャード・チャン、テイジェ・シルバーマン、他

共同脚本 : ジュリア・エリオット
撮影監督 : スティーヴ・シェクター
編集 : トニー・ブラック
録音 : スキップ・ソレル

1998年 / アメリカ / 97分 / video / カラー / 1:1.85 / チベット語・中国語・英語
原題: WINDHORSE

「風の馬」公式サイト


現在チベットには、報道規制により外国からのカメラが入ることは許されない。『風の馬』は1998年に、チベットのラサで監視の目をかいくぐり撮影された劇映画である。歌手のドルカは、中国人の恋人の助けで中国の国営テレビへの出演が決まる。ある日、ダライ・ラマの肖像の掲示を中国政府が禁止し、尼僧である従妹のペマがこれに抗議し投獄された。残忍な拷問の末、ペマは別人のように変わり果て…。
アップリンクHPより転載)


 ただのドラマとして見てしまうと、ストーリーはかなりベタなので、たとえば韓流ドラマが苦手は方は抵抗を感じるかも(私がそうでした)。この映画は特定の誰かをモデルにしたというより、(悲しいことに)今もたくさんいる「ドルカ」、「ドルジェ」、「ペマ」たちの物語なのだと思います。

 チベット語も中国語も同じように喋り、有能な漢人の青年を愛しているドルカ。
 漢人の青年ドアンピンもまた文化大革命で伯父を亡くした。
 仕事もなく、酒を飲む毎日をおくる兄ドルジェ。
 中国への反感を隠そうともしない祖母と、現実にあわせて生きていこうとしている母親。
 真実を口にせずにはいられず、チベットに自由を、と叫んで逮捕されたペマ。
 ペマを拷問させた看守もまたチベット人である。

 ――こんな風に人物造型を挙げるだけでも、チベット本土の複雑な状況が窺われました。

 でも、象徴的でありながら、すごくリアル。
 外国人旅行者エミーが妙に存在感があるな、と思ったら、この設定は実際の逮捕劇がもとになっており、それが映画がつくられたきっかけでもあったそうです。
 また、人気歌手でありながら政府の弾圧に反発して亡命した、というドルカのエピソードは、主演女優ダドゥン自身の経験でもあるそうです。そういう現実感が生きています。
「もう、目をつぶっていることはできない」と決めたドルカの表情は素晴らしかったです。

 見終わった後で、「もし、ペマが逮捕・拷問されなかったらどうなっていただろう」と考えました。

 ペマがドルカの家に来ることはない。幼馴染のことを兄妹は思い出さなかったかもしれない。そもそも、ドルカが映画の最初の方で思い描いていた夢は、中国とともにあったはず。
 ドルカは共産党を讃える歌をうたってスターとなり、漢人の恋人と結婚してチベット語を忘れたかもしれない。そうなれば、まさに政府がのぞむ「中国人」の家庭になっただろう。

 もちろん、言葉や自分の歌を忘れるのは悲しいことではある。それでも、望んで選んだことならば「ドルカ」は幸せになったかもしれない。

 そのドルカを「反体制派」に仕立てた原因は政府であったということが、何とも皮肉に思えます。






 映画のあとで野田雅也さんのトークイベントに参加。おもに、1950年代にチベットがどのように中国に侵攻され、国でなくなったか、というお話でした。

 隣人「ギャミさん」がある日突然押しかけてきて、家に住み着き、大家族を呼び寄せて冷蔵庫のものを勝手に食べてしまう。もともとの住人は暮らせなくなって、追い出されてしまう――。
「大雑把な喩えですが」という前置きつきの話は、でも大変わかりやすかったです。

 その頃、ゲリラ戦の兵士であった方(お名前を失念)の話もありました。
 1959年、法王が亡命された後のノルブリンカへ砲撃が行われた様子は、「砲撃が激しくて煙が立ち込めており、そのため銃を持っていたが、結局(何も見えないので)発砲することはなかった」のだそうです。
 また、当時のチベット側と中国側の戦力がどれほど違っていたのか。
 チベット人が持っていたのは火縄銃くらいの旧式なもの(武器に詳しくないので、何と仰ってたか忘れました)、中国の戦車が彼には生まれて初めて見た自動車だった、という話は印象的でした。

 当時のチベットは外界からの援助は得られず、チベット人の抵抗組織は共産主義拡大を懸念するCIAからの援助を受けるしかなかった。しかし、のちにはアメリカ政府の対中路線の転針によって援助を打ち切られた、という説明も。

 それは、チベットが冷戦中の大国の都合に振り回された歴史であり、今もまた世界の不況の中でチベットが覆い隠されようとしている。
 現在のチベットは、「風の馬」に描かれているよりももっとひどい弾圧のもとにある、という野田さんのコメントは、二本の映画を見たあとでは特に切実に感じられました。
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  1. 2009/05/06(水) 13:08:38|
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