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西蔵放浪

西蔵放浪 (朝日文芸文庫)西蔵放浪 (朝日文芸文庫)
藤原 新也

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印度のそばに、なぜヒマラヤがあるのだろうかと思う。――8年にわたるインドでの撮影のあと、泥の中の蓮を思わせるヒマラヤ世界へ向かった著者の写真と言葉による遍歴記。

第一部 潮干の山を越えて

     蓮華の下
     妙音鳥
     天に優しき地獄
     遠くの彩
     僧
     僕から生まれた山犬が、山の向こうで哭いた

第二部 天の宴

     雲の影
     幻鳥
     経を食む犬
     相似の山
     水中の月に似たもの



 ラダックの本からの芋蔓読書(思いついて引っぱると、つながって出てくる。時に長く、どこまでも続いていることがあります・笑)
 私が持ってるのは1985年の版で、感想もこれによっています。今も入手できる文芸文庫の方にリンクしておきます。おそらく中身は同じかと。

 著者が抱いた印象が濃くにじみ出てくるような文章で、具体的な撮影地はまったく書かれていません。
 本文に「十年ほど前にインドへ亡命したダライ・ラマ」「十数年前の中国と西蔵の抗争」と書かれているので、1970年代の撮影のようです。写真は今のラダックや、ヒマラヤを越える亡命者の様子が書かれているので、そのルート近辺にも行かれたらしい。

 写真は鮮明なものもあれば、夢の風景のように消え入りそうなものもあります。
 断崖と石だらけの土地。傘蓋をかかげて歩く僧侶。麦畑。薄暗い僧院。マニ石――。 独白のような文章と併せて見ると独特の雰囲気。
 好みは分かれそうですが、「言葉による映像。写真による言葉」の本だと思うと、すごく納得できます。私は好きです。

 「インドの対極」という思いを抱いて向かった地では、期待のいくらかは叶い、いくらかは早々に裏切られたらしい。

僕よりももっと鮮烈な生き方をしているとか、まったく逆に、人間の持っている神々しい愚かな面を、今まで見たこともないくらいさらけ出しているとか、やはり西蔵の坊さんというのはその気候や風土が尋常でないように、常人ではありませんようにという、一種の祈りにも似た気持ちを僕は持っていた。

 インドで強烈な写真を撮られた著者だから、チベットにただ幻想を抱いていたわけではないでしょうが、僧院のだらだら いや、のんびりとした雰囲気には途惑ったらしい。

 また、帰れない祖国への思慕を罪のない嘘をつきまぜて語る男、現世よりも来世に徳という財産を蓄えている貧しい男。
 ある章では、出会った人々の顔写真と名前・年齢がたくさん載せられています。その数、108。生きて、やがて死んでいく煩悩をかかえた命、ということなのでしょうか。

 以前に読んだ時は突き放したような文章に馴染めませんでしたが、今読み返してみると、出会う人々の滑稽さ、真剣さへの著者の愛しさが感じられました。

 また、インドへ亡命していく人々の様子が書かれています。

生き神様が自国から逃亡を余儀なくされた時、ひとびとはそのあとを追ったのであった。何しろ神様の居ない自分の国なんて、そんなものは国じゃなかった。神様の居ない土地なんて、そんなところに種まいても、よいものが実るはずがない。それよりも神様の居ない自分なんて自分じゃなかったのだ。

 仏像、食べ物、日用品を運んでいく長い行列。行き倒れた者から衣服をはぐ者もいる、という凄絶なことも記されています。
 インドで屍を撮りつづけたのち、何かを求めて向かったチベットで目にしたのがこの風景であった、ということに著者は何を感じたのだろうか。
 清らかさも汚濁も、崇高なものもばかげたものも、どちらも見落とさない著者の視線の鋭さを感じます。
 20年ぶり(!)にじっくり読み返してみましたが、どこか怖ろしい、でも手放す気になれない魅力ある本です。

 上のような旅立ちの経緯があるので、この本の前編にあたる「印度放浪」から続けて読まれるのもよいかもしれません。
(2009/5 再読)

印度放浪 (朝日文庫)印度放浪 (朝日文庫)
(1993/05)
藤原 新也

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  1. 2009/06/10(水) 21:48:50|
  2. エッセイ・旅行記|
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